授業短信 平成30年11月10日 田澤 由利 先生

紀州くちくまの熱中小学校第2期のテーマは「デジタル時代の生き方・働き方」です。各分野を代表する先生方にお話をいただきます。

平成30年11月10日(土)【2時間目】

田澤 由利 先生
(株式会社テレワークマネジメント 代表取締役社長)
教科:生活

満員電車の中、すし詰め状態で1時間、2時間の通勤を我慢したり、自家用車では給油するたびに「ガソリン買うために働いているわけじゃないのに」とつぶやいたり。無意味な通勤から解放される「テレワーク」はこれからどんどん伸びて行くはずです。「テレワークって、なんだろう?」田澤先生にお伺いしたところ、軽妙なトークで明るく楽しくお答えいただきました。その一部をここでご紹介します。

会社に行かない働き方って?
 ~「テレワーク」を体験してみよう

ライフストーリー
「英語好きのスペイン語専攻、パソコンに出会う」

1962年奈良県生駒市に生まれた私は、夢中になれば一生懸命やる性格の女の子に育ちました。英語の先生が好きという単純な理由で英語の先生になりたいと思い、外国語教育で有名な上智大学に進みましたが、地球上で話している国が多いという理由でスペイン語学科に進学。入学後に英語教員免許が取れないとか、スペイン語は実は南米の国が大半とか、予想外の事実にがっかりしながらも大学生活を楽しんでいた三年目、叔父からシャープ製のパソコンを譲り受けました。当時は、テープが記録媒体でしたが、これを変えるだけでワープロにもなるし、ゲームもできる。一つの機械でいろんなことができる仕組みがとても面白く、夢中になりました。この機械がこれからどうなっていくのか見届けたくて、コンピュータ会社に就活するものの「スペイン語なのに?」と理解されず、何度も落とされました。そんな中、唯一シャープさんと縁があり、めでたく採用されました。人事の方は、前勤務地が「奈良」工場でまさに運命的な出会いでした。

転勤族の夫を支えてフリーランスのパソコンライターに

入社後は大好きなパソコンの製造に携わることができ、世界最小のパソコンを発表したときは、商品開発から関わりました。充実した会社人生だったのにもかかわらず、結婚を契機に大きく価値観が変わりました。1989年のことです。「仕事は自分が頑張ればなんとかなる。でも結婚は頑張ってもどうにもならない」。悩んだ末、1991年、シャープを退職することにしました。当時の職場から「田澤、辞めるのか!?」と驚きを持って受け止められたことを覚えています。

夫が転勤族で、日本全国を転々とする中で、一つ目標を決めることにしました。「子育て中でも、どこに住んでいても、働き続けよう」。できることはなんでもトライする方針で、まず得意のパソコンに関連するライターになりたいと思いました。パソコン雑誌の投稿ハガキでアピールし続け、やがて、記事執筆の仕事をもらえるようになりました。1997年から北海道北見市に移転、家にいながらフリーランスのライターとして仕事を続けました。

遠くにいるので働けない。それを解消するのがテレワーク

やがてインターネットでどうやって仕事ができるの?と聞かれることが多くなり、1998年「毎日、会社に通えなくても働ける社会」を目標にワイズスタッフを私一人で起業しました。ネットオフィスを作り、ネットがあれば通勤しなくていいように環境を整備すればいい人材が集まり、より高度なスキルを活かして働くことができると考えたのです。

2018年、政府の働き方改革関連法案の「柔軟な働き方」の中にテレワークが盛り込まれたことにより、一気にテレワークの認知度がアップしています。テレワークは「離れたところで働く」という意味で、本来働く場所から離れて、コンピュータ、ICTを活用し時間や場所を有効に活かすことができる柔軟な働き方を意味します。従来働きたくても働けなかった人が働けるようになり、国内では184万人がテレワークによって職を得る可能性があります。少子高齢化で介護離職の問題が顕在化する中、企業も優秀な人材を手放したくないというニーズがあり、大企業を中心に急速に普及しています。

総務省の平成29年度の動向調査では、大手121社のうち6割が実施済み、予定を含めると8割が今後テレワークを導入します。地方においても、観光業、飲食などの産業創出、企業誘致などのメリットが期待されています。一方で本格普及までには課題も多く、フォロー教育、スキルマッチの人材育成に関する問題、インフラ整備などイニシャルコストの問題、またコンプライアンス、情報漏洩など、セキュリティに関する問題も挙げられます。そのため、現在のテレワークは「サテライトオフィス」など企業が認めている場所での勤務などに限定されています。白浜町や田辺市で導入されるのは、このサテライトオフィスが中心です。

授業が始まる前には、スマホアプリを使って、オンラインアンケートを実施。
プロジェクタに結果を反映し、この結果を元に授業は進みました。

PHOTO: Hitoshi Tamada, Keiichiro Sata, Shigetoshi Okita