「村ごとファンにさせる男」更別村村長 西山猛

西山村長との出会いは、昨年11月。
私が、熱中小学校とはどのようなもので、実際どのような事をしているのかを知るために、北海道更別村にある「十勝さらべつ熱中小学校」を見学に訪れた時だった。

笑顔が印象的、朗らかな、ステキな「村長さん」が第一印象だった。
しかし、それもつかの間。

熱中小学校を語りはじめた西山村長の目は笑っていない。
「今、行動しないと、何かをはじめないと間に合わない。今でも遅いくらい。走りながら考えればいい。だから、今やる」
「そして、チャレンジしないと何も始まらない」

初対面なのに、熱中小学校の想いを強烈な熱量で私にぶつけてくる。
「命をかけてやる」とも言った。

人口3,500人の村。なんと食料自給率は6400%。
命が続く限りカロリーベースでは死ねない。

カロリーベースで死ねない村が、自らの村の「将来」や「生き残り方」を自ら考え、行動し、矢継ぎ早に仕掛けを打っていく。
その一つが「熱中小学校」だった。
開校当初から、東京大学の研究機関や数社の企業が校舎内のオフィススペースに入居し、地元農家との連携事業などを行ってきた。

今年の6月には、十勝さらべつ熱中小学校の校舎の周辺に、ホテル、レストラン、カフェが併設された。

まさに「走りながら考える」。西山村長のスピード感は、機関車の力強さも備えている。
この人の魅力は「笑顔と気配り」だと感じている。
常に周りを幸せな温度にする笑顔。
訪れるゲストを120%ハッピーにするだけの気配り。

今日は、熱中小学校の全国事務局会議が開催されたが、なんと西山村長が自らバスガイドを務め、自らの村をガイドしていく。
現在は村長だが、元高校教師と言う異色のキャリアの持ち主。
人を引きつける「求心力」は凄い。

村の事をただ説明するわけではない。
西山村長は、訪れるゲストを「ファン化」させる術を心得ているのだろう。
それが、随所に心配りに現れている。

「村を全体を丸ごと売る」。
この人は本気でそれを実践している。
例えば、メガ農業を営んでいる農家さんに直接電話をして、現場を見せる。体験させる。
今まで、見たことも無い広大な畑に、モンスタートラクターやコンバイン。我々が驚いている顔を横目にいたずらっ子のような笑顔をしている。
そして、そのモンスタートラクターやコンバインにゲストを乗せてしまう。
つまり「体験」をされるわけである。
この村の日常を、ゲストの非日常にしてしまうわけである。
あっという間に、ファンになる。

印象的だったのは、『今色んな施策を打っている。今種を蒔いているが、結果がでるのは20年以上経過してから。今、子育て世代の人がおじいちゃん、おばあちゃんになった時に、この村があの時行動してよかった。そう言われる未来を今から用意する』

西山村長のおかげでどれだけの人が、更別村のファンになったのだろうか。
ただ、西山村長が熱中小学校を「やる」という決断をしなければ、僕もファンになることはもちろん、更別村という村を一生知らずにいただろう。

全国の熱中小学校は、こういう「想い」をカタチにする人で溢れている。
「やるか、やらないか」
選ぶのは自らの行動で示す。
それが、熱中小学校だろう。